明応6年大坂御坊において初の報恩講を勤修

蓮如上人

今回は、明応6年(1497年)蓮如上人83歳のときに行われた、大坂御坊での報恩講についての御文章を紹介します。

目次

法敬房順誓への指示

蓮如上人は、75歳のとき本願寺留守職を五男実如上人に譲り隠居されました。

その後も、報恩講は山科でお勤めになり、さまざまな指示を出しておられました。

しかし明応6年11月に大坂御坊(石山本願寺)が建立されたこともあり、この年は、富田御坊と大坂御坊で報恩講を勤められることになりました。

富田御坊についてはこちらの記事をお読みください。

そこで蓮如上人が、お使いとして大坂御坊に訪れた法敬房順誓に指図されたことが、御一代記聞書にあります。。

明応六、十一月報恩講に御上洛なく候間、法敬坊御使トシテ當年御在國ニテ候間、御講を何と御さたあるべきとたづね御申候に(中略)又大上様は七日の御講のうちを富田殿にて三日御つとめありて、二十四日には大坂殿へ御下向にて大坂殿にて、四日の御勤行なり。

(引用:『御一代記聞書』

意訳:明応6年(1497年)、11月の報恩講のために京都へ上洛されないので、実如上人は法敬坊を使いとして送り「今年は大坂にいらっしゃるため山科本願寺での報恩講はどのように勤めたらよろしいでしょうか」と蓮如上人にお尋ね申し上げたところ(中略)また、蓮如上人は7日間の講のうち、富田御坊で3日間勤められ、24日には大坂御坊へ下向されて、大坂御坊で4日間の勤行をなさいました。

蓮如上人は、この時83歳でありましたが、京都の山科本願寺と大阪の富田御坊・大坂御坊の報恩講にこまやかに心をかけられ、指揮をとられていました。

そしてこの年、大坂御坊では建立後はじめての報恩講が勤められました。

明応六年の御文章

明応六年の報恩講について、御文章に次のように書かれています。

抑此御在所大阪にをいて、いかなる往昔の宿縁ありてか既に去ぬる明応第五の秋のころより、かりそめながらかくのごとく一字の坊舎建立せしめ、又当年明応六年の仲冬下旬の冬にいたり、かずかず周備補足の為体、まことに法力のいたりか、又念仏得堅固のいわれか、これしかしながら聖人の御用にあらずや、これによりて門徒の輩一同に造作に普請造作にこころつくして、粉骨をいたさしむむる条、真実々々往生浄土ののぞみ、これあるかのいわれ殊勝におぼえ侍べりぬ、しかれば当年聖人の報恩講より来集の門徒中一向に往生極楽の他力信心をとらしめて、今度一大事の報土往生をとげしめたまわば、これしかしながら今月二十八日の聖人御本源にはひかなうべきものをや、信ずべし、よろこぶべし。

それ当流聖人のご勧化の安心というは、あながちに罪障の軽重をいわず、ただ一念に弥陀如来、後生たすけたまえ、と帰命せしともがら、一人としても報土往生をとげずということあるべからず、と各々こころうべし。このほかにはさらに別の子細あるべからずとおもうべきものなり。あなかしこ あなかしこ。

(明応六年十一月二十五日)

引用:『帖外御文』

意訳:さて、この大坂にどのような昔からの因縁があったのだろうか。去年の明応5年(1496年)の秋頃から、とりあえず形だけの小さな坊舎を建て始め、今年の明応6年(1497年)の冬の終わり頃、ようやく整備が整い、満足のいく形で完成した。

これはまことに法力のおかげか、それともまた念仏得堅固の道理であろうか。そもそもこれは親鸞聖人のご恩によるものではないだろうか。

だからこそ、門徒の皆が一丸となって石垣や建物建立に懸命になり、骨身を惜しまず働かれたのだ。これはまことに、浄土往生を望んでいればこそのこと。大変素晴らしく尊いことだと思われる。

ここで、今年の聖人の報恩講に集まった門徒たちが、一心一向に極楽往生の他力信心を獲て、浄土往生の一大事を遂げることができたならば、それこそが本当に親鸞聖人の願いにかなうことである。

信じるべし。喜ぶべし。

親鸞聖人が教えられた安心とは、罪障の軽い重いにはかかわらず、ただ一念に「弥陀如来今度の後生たすけたまえ」と帰命したものならば、だれ一人として報土往生をとげないということはありえません。

このほかに何の子細もあろうはずがないと、知らなければなりません。あなかしこ あなかしこ。

蓮如上人は、この報恩講の御文章で大坂御坊の建立を喜ばれるとともに、親鸞聖人の教えの肝要を教えられました。

編集後記

蓮如上人は晩年、大坂御坊に大変心をかけられながら、報恩講をお勤めになりました。

また、大坂御坊の建立に携わった門徒のご苦労をお褒めになられました。

その上で、親鸞聖人の御恩に本当に報いることは、他力信心を獲ることであることを、はっきりと教えておられます。

9月10月11月は、浄土真宗では親鸞聖人の報恩講が多く勤められます。

浄土真宗親鸞会大阪会館で、親鸞聖人の御恩に報いられるよう、阿弥陀仏の本願を真剣に聞かせていただきましょう。

蓮如上人

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